もうキャーキャー騒ぐほどではなくなったけど、今でもあの目に見つめられると見透かされているようでドキッとする。
キムタクが好きだと言いはじめたのは、高校生くらいの頃からで、とにかくカッコつけて、ワザとらしく髪をかきあげるような男なんて、毛嫌いする友達の方が多かったけれど、私はあえてそんな男が好きだと堂々と宣言した。
自分の魅力を恥ずかしげもなくさらけ出して、自信のなさなんて、これっぽっちも見せないキムタクが、誰かに後押しされないと全然自信がなくて、いつも人の目ばかり気にしている自分とは正反対だったから。
好きだということで、あっちの世界にいけたような気になっていたんだと思う。
キムタクは私の夢だった。
今、気づいたけど、これまで好きになってきた男の人たちもみんな、キムタクみたいだった。黒っぽい服しか着ない人、とにかく自分のすごさをアピールしてくる人、夢ばかり語る人……。
彼らはみんな自分に自信を持っていて私をあっちの世界に連れていってくれた。彼らを好きでいるときは、自信のない自分が夢を叶えたようにキラキラ輝いた。そんなときの私には、自分の力で叶えたい本当の意味での夢なんて、ひとつもなかった。
だけど、今の私には夢がある。
本当の意味での夢。
誰かの人生を物語にして残したい。結婚式で読む手紙みたいに、たった2、3枚の便せんの中に忘れたくない家族のドラマを詰め込みたい。結婚式じゃなくても、誰の人生にも感謝や希望でうめつくされたドラマみたいな話がたくさんあるはず。だって、人生はキラキラしているはずだから。わたしの人生だって、そう。きっとキラキラしている。
キムタクを自分の夢だと勘違いしていた私が、本当の夢を持てるようになったのは、母になったからだと思う。娘に残せるものは何かと言われたら、まだ何もないけれど、今わたしがどんなことを考えて、どんなことに幸せを感じて、どんなことを反省して、どんな人になりたいと思っているのか、いつか娘には知ってほしい。
それを知った娘の気持ちは・・・・・・わからない。ただ、なんとなくだけど、昔の私みたいに自分に自信がないとは言わない気がする。お母さんも、がんばってたんだな。それを知るだけで、娘の勇気になる気がしている。私は娘の勇気になりたい。
誰かの生き方は、それを受け継いだ家族の勇気になると思うから、私は人生を残したいんだと思う。
みんなのキラキラの人生を、キラキラの私が残したい。もうキムタクなんていらない。この夢を叶えてハワイに住んで、たくさんの洋服を好きなだけ買って、パン屋さんも作りたいし、子どもだってもう一人欲しい。芸能人にも会えるような有名人になって、テレビにもでちゃったりして。夢はどんどん膨らむ。
母になって、本物の夢まで語れるようになったんだから、もう自信がない私からは卒業! やっと本当のキラキラの私になれたんだ!!!と思う。
それなのに・・・・・・まだ不安になる。
本当に私はこの夢を叶える気があるの? 本当にできるの? どうやって始めるの? ダメなんじゃないの? あなたに何ができるの?
どこかで、誰かに追い詰められる。そう言われたら何も答えられない。だって失敗するのは怖いし、笑われるのはイヤだもん。やっぱり自信なんてない。昔の私みたいに誰かにすがりたくなる。私は結局、母になっても何も変わっていない。外では夢、夢、夢ばかりを語って、キラキラの自分を演じている。でも家に帰ったとたん、何も行動を起こせていない自分を責めて落ち込む。
私の夢は、叶えるつもりのないものばかり。だって、夢を叶えるためにはキラキラなんてしていられない。汗にまみれて、汚くなって、時にはずるくなって、人を蹴落としてでも叶えたい、本気の夢なら、キラキラしてなんていられなんだ。キラキラした夢を、キラキラのまま叶えようとしている限り、それは一生、手に入らない。本気の夢は、かっこ悪く生きながら叶えるもの。
わかってる。キムタクもカッコイイはずの男たちも、夢も、手が届かないから輝いてみえたんだ。手を伸ばせば、すぐそこにある現実を幸せだと感じることができない私は、自分にないキラキラを夢だと追い続けることで、自分を輝かせようとしている。だから不安になる。キラキラのままじゃ、進めないってわかっているから。覚悟を決めなきゃいけないって気づいているから。
わたしは偽物のキラキラの自分じゃなくて、本物のカッコ悪いわたしを娘に見せなきゃいけない。泥だらけで、不器用で、失敗ばかりでも、人生はたのしい! って言えるように。みんなの人生だって、きっとそう。キラキラだけじゃない。かっこ悪くても、生き続けた人生。私はそれを残さなきゃ。それが誰かの本当の勇気になる。
そろそろ、傷つく覚悟を決めなきゃ・・・・・・。
だけど、やっぱり、たまに心が折れちゃうと思うから、キムタクの夢だけはキラキラのままでいさせてください。
あなたの夢も、応援しています。
No responses yet