月に一度の次女の通院デイ。
病院は好きじゃない。
疲れるし、暗い顔の人が多く見えるし、
次女への視線も気になる。
何よりも交通の便が…。
自宅から病院までは公共の交通機関を使うと
電車とバスで1時間。
2歳半で首の座らない次女とベビーカーを抱えて
バスには乗れない。
阪急河原町駅と病院の往復にはタクシーを使う。
しかも今日は豪雨予報。
何もかもイヤだったけれど、
行かなければいけない。
気が重い私と湿気でダルそうな次女を乗せてくれる
タクシー運転手さんは、優しい人がいいな。
せめて、イヤそうな雰囲気は出さないでね。
前に一度、ベビーカーだからと雨の日に
乗車拒否されてから少し怖い。
行きの運転手さんはクリア。
準備に時間のかかる乗り降りも、
ゆっくり待ってくれた。
脳外科と小児科をなんとか終わらせた。
さて、帰りはどうしよう。
雨は降っていない。
次女の首後ろに付けていた保冷材はもうクタクタ。
ベビーカーに乗せるだけで泣く。
抱っこすれば大丈夫だけれど、
夕方が迫る電車に子どもを抱っこでは座れない。
自宅までのタクシーはお金がかかるな。
夫は使ってもいいよと言ってくれたけど…
そもそも、ロータリーの乗り場に
なぜかタクシーが一台もいない…。
私の後ろには、
おじいさんおばあさんが並んでいく。
一台のタクシーがやってきたが、
先頭の私たちではなく、
後ろの高齢者さんの前に留まった。
「乗らはりますか?」と
おばあさんに声をかけられたが、
運転手さんの顔とタクシーをちらっとみて
「大丈夫です」と答えた。
なんかイヤな予感がしたから。
「ほな、ありがとう」と後ろの人が
タクシーに乗っていく。
3台ほど見送ったところで、
配車タクシーアプリをのボタンを押した。
待っているより、
私たち専用の車を呼んでみようと思った。
すぐにアプリが反応した。
3分で着くとメッセージがきたので、
「ベビーカーの子どもと母です」と返した。
先に心づもりをしてもらいたかった。
すこし遅れて到着したタクシーの運転席から
飛び出してきた運転手さんは、
ベビーカーの中で、もだえる次女を見るなり、
「かわいすぎますな」と言った。
あ、この人だ。
行先を自宅までと告げた。
「桂川からいつもタクシーなんですか?」と
聞かれたので、本当は河原町まで10分程度の距離をお願いしようかと思ったが、感じのいい方だったので
今日は雨だし、疲れたし、自宅までお願いしようと思ったと伝えた。
そこから自宅までの50分、
彼の身の上話は尽きなかった。
まず、京都の家を離れて富山まで単身赴任をしたこと。その頃、娘さんが私の次女くらいの年齢で会えなかったから、あの頃を思い出して、かわしらしいと。
なぜ富山なのかと聞くと「あちらの方々に肉やお好み焼きのおいしさを教えたらないかんと、もうアホですわ、夢破れて帰ってきましたけどね」と。
一度、娘さんと富山に住んだが京都に戻ったら富山弁をバカにされて図書館にこもっていた話。彼女は今、就職活動をしていて東京に行ってしまうかもしれない。
富山から戻って実家の跡地をゲストハウスにしたら当たって、2件経営している話。妻がおしゃべり好きなのでゲストハウスのお客様がリピーターになってくれるがコロナで3年は無収入だった話。頼りにしている奥さんなのに、酔っぱらって足の骨を折って一か月半も入院していた話。
浪人している長男の学費のためにタクシー運転手をしている話。牛肉は宮﨑と鹿児島が一番だという話。
奥さんが私と同じ福岡の人で、
九州各地のおいしいもの話。特に鳥皮の焼き鳥。
自宅に着く直前で雨が降ってきた。
彼は傘を二本使って何度も往復。
最後に振り返ると、ベビーカーの娘にマスクを外した大きな笑顔と両手で「またね」と言ってくれた。
雨の京都、コバナシ。
だから私は人のストーリーが好き。
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