それは何度でも、目の前にやってくる。

書く人になりたいとはじめて思ったのは、たしか大学三年生の頃だった。

 

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就職先も決まっていなくて、自分がなりたいものも自信を持って言えない。当時、一番おなじ時間を過ごしていた友達が半年ぶりくらいにうちに泊まりに来たとき、ひとり言のように、「小説家にでもなろうかなぁ」と言ってみた。背中越しにその声を聞いた友達は、すぐにふり返って、「いいんじゃない!」と答えてくれた。たぶん本気で。

 

うれしかった。私たちは商学部で、小説なんてぜんぜん関係なかった。本すら、読んでいなかったと思う。それくらいとっぴょうしもなくても、ふと思いついただけのことだったのに、それをいいと言ってくれる人がいた。

わたしは、それだけで満足して、そこから先を考えようとはしなかった。考えてもわからなかった。どうやったら小説家になれるかなんて。ただ、書けばいいだけだったのに。

 

あの日からずいぶんと時間が経った。地元の福岡で唯一採用してくれた会社に就職して10年だった。私の就活は、やりたいこともハッキリさせず、企業分析も何もしなかったから、面接では思いつきでそれらしいことを言った。それでも雇ってくれた会社に感謝していた。働いてみたら、とても居心地がいいし、仕事も悪くない。人間関係だって上々。長く働くほど、その気持ちは増した。これでよかったのかも。まちがってなかったのかも。

結婚もした。子どもが産まれて、この子が大きくなって、夫と年をとって、それなりの人生が待っている。道はもう見えた。もうがんばらなくていい。なりたいものがなくたって大丈夫。自分は何者かなんて悩まなくてもいい。それがうれしかった。

 

そのはずだったのに、今、わたしは悩んでいる。

 

「書く人になりたい」

 

3年前、夫のススメで友達を作るために通ったライティング講座にハマッた。小説家になりたい夢なんて忘れていたけれど、なんとなくいいかもと思ったのがライティングだったのは、きっと心のどこかが反応したから。今まで、タバコの煙みたいに口からなんとなく吐き出されては、すぐに消えていった言葉を文字にする。はじめて自分の目で見てみると、なんだかしっくりくる。うとましがられるはずの煙が、文字にすると受け入れられる。どんどん出てくる。気持ちいい。時には、芳しい香りみたいに相手をつつむ。喜んだり、涙ぐんでもらえることもある。こんな快感、はじめてだ。

 

伝えるためには、スキルが必要なんだと教わった。先生はそのスキルを持って、仕事をしていた。かっこいい。私もなりたい。だけど、仕事を辞めたら収入が減る。子どももできたんだし、リスクをとるなんて無謀だよね。そもそも、就職みたいに誰かにやれって言われたワケじゃない。私がそれをやらなくても誰も困らない。10年前のあの日みたいに、やらない言い訳ならありったけ思いつく。

 

やらなくてもいい。でも、やりたいかもしれない。そのハザマでモヤモヤしていた。そんな私を知った先生が、ライター交流会に誘ってくれた。お前なんて、まだまだだよ。何ネボけたこと言ってんだ? そう言われるのがこわくて、直前までモジモジしていたけれど、行ってみた。

 

4人のライターさんがいて、参加者も60人くらいいた。少し遅れたわたしは、一番後ろの席にこっそり座った。マジメなのを想像していたけれど、飲み物ラインナップにお酒が入っているようなノリの良い人たちだった。「おもしろい人が、おもしろい記事を書くんだなぁ」とハイボールの缶を空けながら思った。

 

約1時間を過ぎ、盛り上がりのピークにきたころ一人のライターさんが言った。「紙は制限があるから、おもしろい。ここまでに収めなければいけない。さて、どうしよう。そこから文章が洗練されていく」

 

制限があるからいい。

 

わたしの夢までの制限なら、いくらだってある。それを言い訳にして、辞めることもできる。でも、このライターさんが言うように、もし今のわたしの夢が本の編集だったら? 締め切りがあって、待ってる人がいたら? どんな制限だろうと、できる限りの知恵を絞って、本にするはず。しなきゃいけない。

 

書きたい夢があるなら。どんな制限があっても、一冊の本を書きあげるつもりでやってみよう。ここを削って、改行はここで、うまくつなげて、句読点は読みやすいか考えて……。そうすれば、できあがりは想像しなかったほど洗練されてる。いつかは人生にも終わり(制限)がくる。そのときまでやり続ければいい。今すぐとか、半年後とか、あせらなくていい。私の人生はまだ終わってない。

 

きっとこの夢は、わたしの人生が終わるまで、何度も何度も、こうやって私の目の前に現れる。その時何度も、言い訳して逃げる? ぜったい、またくるよ? 何度でも。あー、こわくなってきた。だけど、夢に向かって進んでいれば、こわくない。いつか終わり(制限)がくる、そのときまで、逃げずにがんばろう。やっとそう思えた。

 

神戸 #ライター交流会 vol.01 〜関西人魂が世の中を面白くする! | Peatix

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