自信のないあなたへ。自信のない私から。

「自信」

高校時代、お守り代わりにカバンの中に入れてた本のタイトル。勉強もできて、しゃべりもうまくて、男子からも女子からも好かれるガラガラ声の女の子に嫉妬していた。私の方がかわいいのに。ハーフ顔の友達には、私の方が楽器吹けるもん。バスケットボール部のボーイッシュでかっこいいクラスメイトには、私の方がスタイルいいもん。早口で思ったことをどんどん言い続ける友達には、私の方が勉強できるもん。

私に友達なんていたんだろうか。はたから見れば、誰からも好かれる性格のいい子。でも笑顔の裏では「あいつよりもアイツよりも、私の方がすごい(はず)」って思ってた。なのに自信がなくて、誰にも話せなくて心細くて授業の合間の10分休みにその本を取り出してはこっそりページを開いていた。

自信がないのは人と比べるから。自分にしかない個性を磨け。そんなことが書いてあったかな。もっと鋭くて直接的で、ブレブレの私の気持ちを矢で刺して動けなくしてくれるような言葉がつづってあったはずなのに、もう思い出せない。

劣等感は圧倒的な努力でうめた。高校は県内トップの公立高校だったし、その中で通知表をほぼ5でクリアし、東京の私立大学に指定校推薦で入学した。「ほらね、最後は私が勝つ」心の中でガッツポーズ。

だけど大学でまた劣等感ループが始まる。周りはすべて敵。表面的には味方のフリして笑顔。ノリもいい、愛想もいい、いい人そうな人。友達も多かったよ。でもどこかでみんなを嫌っていた。社会人になっても、結婚しても、子どもが産まれても。「すごいよね」とほめられたら、「あたりまえでしょ」と思う気持ちと「本当の私はそんなにすごくない」って気持ちがあって相手によって態度を変えた。

ずっと自信が欲しかった。勝ち負けのない世界にいきたい。きっともうすぐだろう。この山を越えれば、あのトンネルを抜ければって思ってきた。がんばった。うまく力を抜いたり入れたりしながら、まぁそれなりにいい感じでここまできた。1ヶ月前、チャンスの神様にも出会った。もうそろそろいいだろう。もうこのあたりで自信ありますって宣言してもいいかな。

ううん。まだだ。まだ何か足りない。

幼稚園生の頃だから、あれは4、5歳くらいだったのかな。おじいちゃんに連れられて、ロータリークラブという社長やお金持ちさんたちが集まるパーティに連れて行かれたことがあった。ちょうどクリスマスパーティか何かで、子どもたちもたくさん来ていて、司会の人が「さぁ、みんなステージにあがって!」と会場の子どもたちを集めた。

一緒にきていたお母さんが、「あみちゃんも行っておいで」と言ったけれど、あんな子どもじみた演出に私がのるわけないでしょ、と首を横に振った。次から次に目を輝かせてステージに上がる子どもたちをお母さんの陰に隠れて見ていた。「さて……!」と司会のお姉さんが声をかけたのを合図に私はお母さんの足をスルリと抜けてステージにあがった。そこは高くて大人たちが下から見上げていた。スポットライトが熱かった。でも私は最後の方に駆けていったから、みんなの後ろでぜんぜん目立てなかった。

そこで何をしたのかは覚えていない。ただ、前の子の頭に隠れて大人たちの表情がぜんぜん見えなかったこと、おじいちゃんやお母さんは私がここにいることに気づいているだろうか、私は周りからどんな風に見えているんだろうかばかり気にしていたことは、はっきりと記憶にある。

とぼとぼステージから戻ってきた私に、「やっぱりあみちゃんは目立ちたがりなんやから!」と母に笑いながら言われたのが恥ずかしかった。目立ちたがりのくせに、目立てないヤツだから。私は。

目立ちたいのに目立てない。その情けなさを感じないために、私は目立ちたくなんてない。人並みでいい。目立とうとしてもいいことない。目立とうとする人はバカだ。目立たないように生きていこう。ステージの上で輝けなかったあの日から、私はそう思って生きてきたんだと思う。それが私だと言い聞かせて。

だから自信がなかった。だって本心で生きてないんだもん。目立ちたくて、私は人よりすごいって自分が一番思ってるくせに、出してないんだもん。そりゃいつまでたっても、自分を信じるなんてできっこない。

2ヶ月前、尊敬する女性のトークショーに行ったとき、私はなるべく目立たないように地味な服装ででかけた。だって、本人より目立とうとするなんて恥ずかしいし、失礼でしょって思ってたから。本当は真っ赤の服を新しく買っていたのに、結局やめた。

今日、その話を友人たちとたまたま話していたら、ある男性から言われた。「それは、きみが地味にしていないと本人より目立っちゃうって思ってるからでしょ」

あまりにも本当すぎて、本人でさえ気づけなかった野心を絶妙のタイミングでズバッとさらっと笑顔で言われた時、人はおかしな行動をするらしい。私はその場で立ち上がって、天を仰いだ。言ってみれば、オウマイゴッド。

誰よりも目立ちたい。誰よりも目立つ自信がある。私は誰よりもすばらしい。そう思ってたくせに。ずっとずっといつだって忘れていなかったくせに。忘れたフリをするなーーーーー!!! かっこつけるなーーー!!!

バカはお前だ。やっと気づいたか。もう自信がないというのはやめろ。今度言ったら、正真正銘のバカだ。肩で風をきって歩け。めいいっぱいオシャレしろ。もっと目立て。「私すごいんですーーー!! 何もしなくても目立っちゃうんですーーー!! こんなにすばらしくてごめんなさいねーーー!! あはははーー!!」で生きろ。

自信のないあなたへ。自信がないってそれ、本心ですか? 誰にも負けたくないって思ってるの、あなたじゃないですか? 勝負の世界に飛び込んで、周りを蹴ちらしたい衝動を抑えつけてませんか? ステージの上で一番になる快感を求め続けているんでしょう。隠さず笑顔で戦いましょう。それがあなたです。

37歳になるまでほとんど戦いを避けて生きていて、自信がないって言ってたわたし。めっちゃ恥ずかしいやつだな。何と比べてたんだ? 何と戦ってたんだ? ステージに上がらない私は誰の目にも戦う相手としてうつってなかったのにね。

あー、はずかし。

5時間くらい前まで自信のなかった私からは、以上です。

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