だけど、私、幸せだよね?

運転席から夫はさらっとこんなことを言う。

「いつも、あなたがもっと幸せになるように考えてますから」

結婚して6年、娘は3歳、互いに上場企業の正社員で、駅から徒歩2分、築4年の4LDKに住んでいる。

「え、わたし、今、充分幸せですけど」

「そうか、ありがとう」

愛の表現を出し惜しみしない夫には慣れたつもりだけど、私の笑顔のために自分の人生を捧げているような言い方に、照れくささと不思議な感覚を覚えた。

「ほんとに今、幸せなんやから、まだまだみたいな言い方せんでよ」

なぜかムキになって、今で充分幸せだとわかってほしくなる。

「そだね、ありがとう」と夫は言うのに、まだ言い足りない。

 

「でもさ、不思議よね、私はこうなったら幸せってはっきり言ってるわけじゃないのに、やすくんは、これなら幸せだって思ってやってるわけでしょ。ある意味、自己満っていうかさ」

最低な発言。

「そうかもしれんな」

夫はテンション変えずに運転席から返事をくれる。素晴らしすぎる。

晩ごはんを食べながら、夫が「どんなんが幸せ?」とまたその話題。私って、そんなに幸せそうじゃないのかな。月に100万円以内なら、夫の許可なく買い物ができる知り合いの話が気になっていたみたいだ。

「そんな風になったことないから、わからない」と答えると、想像してみて、ときた。

幸せは金じゃないなんてキレイごとだと思う。CHANELのバッグもまだ買ってないし、欲しい服やバッグを買うときに夫に聞かなければいけない関係はすこし窮屈にも思う。だけど、反対されるわけじゃないし、もっと自由にお金を使いたいなんて、月給16万ほどの私が言えた話じゃない気もするし、9万円のワンピースだって、2ヶ月前に買ったじゃない。

晩ごはんの食器を片付けながら、そんな思いがくるくるまわる。

「でもさ、やっぱりさ、こうやって私のことを面白いって言ってくれる人じゃないと、私は幸せじゃないよ」

「そうか、ありがとう」

夫は満足そうにしていた。

これでよかったと思う。私の物欲は止まらないから、今の段階で夫にこれ以上は求められない。まだ足りない、まだダメなんて思いたくないし、思って欲しくない。

だって、すごく良くしてくれてるもん。

充分でしょ。

さて、私はそう思うことで「いい人、いい妻」を保とうとしているのか、そう言ってれば、夫がもっとがんばることを知ってるからなのか。

答えは今はでない。

だけど、私、幸せだよね?

ね、そうだよね?

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