「備える夫」と「備えたくない妻」※夫婦論

「あんまないけどさ、保育園から電話かかってくることがあるからさ、お願いよ」

夫に伝えたら、

「え……」と反応された。

マジか……。

なんでよ、あなた休みだよね? まさか寝たら爆音の目覚まし時計にも気づかないからとかそんな理由?! と逆切れしたくなる。あなたがいつも神(対応)だから、韓国にも行く決断ができたのに、2日前になってその反応はないでしょ。怒りがどんどん増してくる。

それなら、とヒートアップしてしまった私は、「だってさ、私、ラインはつながっても電話はつながらないんやろ? じゃあ、どうしようもないやん(あなたがどうにかできるって行ってくれないと、安心して行けないでしょ)」と口走ってしまった。

「そうか……」とケンカにならない冷静な夫は、「ちょっと貸して」と私のスマホを取り、操作しはじめた。指紋認証でロックをはずすように画面を向けられる。あかん。何かやろうとしている。夫の備えたい病が発症してしまった。

夫は貯金が得意で500円玉貯金で30万円を3回も溜めたことがあり、もうすぐ4回目も達成しようとしている。私はあればあるだけ使いたい。結婚式のとき、母にひと言、言われた。「ガマンするんよ」私のことよくわかってるわ、お母さん。だけどね、結果、母の助言は裏目に出た。私はガマンどころか、娘をおいて飲みにもいくし、2次会にもいくし、なんなら1泊旅行くらいなら、もう2回もしたことがある。

なんか自慢みたいだね。でもさ、そこのお母さんたちに聞きたい。なんで? ダメな理由はナニ? 怖いから。不安だから。そんなとこかな。私だって、それがないワケじゃないよ。だから、夫にも保育園の電話にはでてくれるようにお願いした。

こないだ会社で1歳半の女の子を育てるお母さんが「昼にママとしか遊べなくなって悲しい」と半分満足そうにも見える顔で言っていて、「いや……」とソッコーで否定して、二日酔いであることを満足そうに披露した私……(嫌味なヤツ)

それでも開き直って言う。とにかく私は制限に対して無条件に反発してしまう。私にしてほしいことがあっても誰も指図はできない。された時点で反対のことを考えるから。だから、夫は何も言わずに私のスマホを取って、何かをし始めた……。この雰囲気を出されたら、なんも言えねぇ。

ものの5分で「できたよ」と夫が言った。私のスマホに新しいアプリが入った。Wi-Fiさえあれば、どこでも電話がつながるIP電話。あぁ、備えられてしまった。仕方ない。ちょっと嫌だけど、指図してもやらない私を知っている夫の最善のやり方だ。

いつの日だったか忘れたけど、お金にも行動にも奔放な私に夫が言った。「なんで、そんなに備えないの?」3秒置いて、私は大きな声で言った。「備えたくないんやもん!」我ながら、よく言ったと思った。結婚して6年、できるだけ夫の貯金にも協力しようとしてきた。母の助言を守って、飲み会を断ったこともあった。だけど、だけど! ムリーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーだった。

貯金をしたり、誘いを断ることは私にとって、欲望を抑えること。できない。韓国旅行に行くのに、ずっとスマホの着信を気にしないといけないなんてイヤ。だったけど、今回は夫に負けた。

負け惜しみに言ってやった。「備えるってさ、不安やからやろ?」

夫は意味がわからないようだった。備えるという当たり前の行動に感情がないらしい。「よく考えてみて。なんかあるやろ、喜怒哀楽のどれ? それとも不安とか」わかりやすい誘導尋問を交わし、夫は言った。「喜、かな。安心とか」

ふーーーーーーーーん。「それは備えないと安心できない、つまり不安やろ」とまたも嫌味を言う。

でもすぐにまた負けた。

「でも、ぼくが備えてるから両替できたんやろ」

あ……。口座に2千円しかないくせに、あした銀行で2万円を両替するつもりだった(どうやって!)だけど、昨日たままた烏丸に言った夫が旅行会社で両替してきてくれた。「あのお金、返して」とさっき言われて、「ない」とはじめて自分にお金がないことに気づいた私(ある意味、神ってる!)

そうだ、やっぱり夫が備えてるから、私は飛べるのか。

今日は、そういうことにする。

おやすみなさい。